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作品概要 作品資料


作品概要

【100物語 絵巻物・奉書】

『100物語』は絵巻物としての表現形式が意識化され、膨大なエスキースが試みられている。

ここに掲載されているものはそのごく一部であるが、おそらく完成作品へ向けての最終段階のスケッチ(エスキース)であるだろう。
また、100箇のテーマはそれらのスケッチを支えるエピソードが書かれたテクストである。

疎開先の祖父の家は美濃焼の郷にある作り酒屋だったという。
日々の生活の場面のなかで昌範少年が経験したエピソードや、そこからにじみ出てくる人々の世界観などが少年の視線から綴られている。
50年以上を経た後に、書かれたエピソードはすでに存在しない世界の出来事や様相を夢幻のように、しかし不思議な透明感を持って浮かび上がらせる。

土、水、火と人の力によって営まれる窯場のエピソードはこの物語全体に中心的な時間軸と力を与えているが、それは焼き物ができ上がり、商品として町に出荷されていくまでのプロセスを克明に描写していることによるものだろう。
また、昌範少年の視線は同世代の少年少女たちよりもむしろ、働く大人たち、老人やよその土地から訪れた魅力的な異邦人に注がれている。

100箇のエピソードには、小さな郷での出来ごとが老人たちや異邦人の視線に照射されることによって、よりいっそう豊かな意味を帯び、少年の目により生き生きとしたイメージが浮かび上がる世界だったことが雄弁に物語られている。
いいかえるならば、そこは昌範少年にとって、特別な異彩を放つ不思議の国であり、あるいは画家加藤昌範にとって、忘れがたい記憶のラビュリンストス(迷宮)だったのかもしれない。


【100物語のテーマ一覧】

1-A 想念・・・
日常、仲間だった人達、共有し、ぼっとうしていた生活。それが急に遠くなってしまった寂漠感、孤独感。赤い夕陽は、その仲間、生活を燃えるような朱色に照らし、包み込んでいた。私はしのびよる夕影に増々沈み込んで行った。落日の一刻は夕暗に向けて急いで行った。

1-B 想念・・・
外界へのつながりを託す唯一の手掛かり、未知の生活への不安、遠い世界への旅立ちを想う時の...どうしても越えねばならなぬ道程、越しからの離別(藤沢周平...“橋”)彼岸

2 祭りに鶏をしめた
・・・無言・・・“むくろ”“死体”のカシャクなき提示。飼料をやり、水を代え、卵子を採り、夕暮に鶏小屋に入れる為の追い立て。それらの代替に、突然提示された...死の変身...残酷さよりも...“死のおぞましさ”。...を恐怖のうちに直視させられた。死の拒絶体験だった。

3 わらじづくり・・・
祖母「前後左右...同じに締めにやあかん。そうせんと曲がったりねじれてしまうに...」 ボク「うん。そうしてるんだけど、うまく行かないんだ」「やっぱり左右の大きさが違った!右が小さいや」 祖母「ちと、右のかかとがはみ出すのう。まあええわ!」 祖父「そんなにいつも力を入れてあむ必要はなけに!かんじんの所は、しっかりあむのが大切や」

4 お祖父さんの座右宝
徳利、ガラスのカンピン。お酒(夕食〜ゆうげ)ほんのり酔いが廻った赤い顔... 祖父「もう一寸っと呉んかえ?もう二〜三杯分・・・」 祖母「もうその位で置いときなれ!この所・・・大分に進んでおいでるぞな!」*.結局祖母はもう五勺程、カンをつけ、差し出す。祖父は静かに、満足気に又飲み始める。 祖母「そんな所でうたた寝せんで寝床へ言って休みやあよ。お風呂はどうしやすな?」「なに...今夜はええか...そんなら止めておきなはれ...!そんなに寝たければあかんに!」「ほな...あんた達、先は入りやあ」 僕と妹「うん」 祖母「耳のうしろ、爪...よく石鹸つけて洗いやあ!」

5 お祖母さんの座右宝
えびす、大黒、稲荷様、仏様)

6 未稿

7 水汲み...独白...
「水がめの水・・・ならいつでも汲んでやる!でも飲むんなら・・・汲みたてが一番うまいや!」 「風呂の水汲みは...やあだなあ!学校から帰ったらすぐ汲んどかないと仲々沸かないし...バケツは、大きくて運び辛いし、釣べば何回も下さなければならんし。風呂桶は背高ーだし。」 「やっと終わった!あっ!忘れてた。薪だ」 「やっと遊びに行ける」と門口からかけ出す。

8 鶏小屋...お掃事(日課)〜独白
「臭えなあ!何だ?この卵子の白実みたいなヌラヌラは!きったねえなあ!こいつを踏んづけたら大変だあ遺り水で洗ったて消えないから!」「それでもなあ・・・毎朝食べる卵を生んでくれるもんしなあ・・・お祖母ちゃんが刻んでおいてくれた菜葉はこれ・・・それに粉ヌカはこれ。貝の粉末を混ぜて・・・と。そらお前等!食えよ!。今日はどじょうを採って来てやるぞ・・・オレ味噌汁の中に浮いてるどじょう大嫌いだ!」

9 鶏が猫にやられた
ボク「お祖母ちゃん!大変だ!鶏小屋の戸が開いていて血がついた羽根が散らばってる。一匹も鶏がいないんだ・・・」  祖母「野良猫だ!薮や納屋の裏を見てみよ!鶏が放り出されてるかもしれんに!」 ボク「一匹だけ足りん!あとは納屋裏に居た」「血がついた奴・・・きっと猫がどっかに持っててしまったんだ・・・!」

10 鶏の足を縄でしばり、和尚にしかられた。
夕刻鶏を小屋に追い込むのが大変で足に縄をしばりつけた。 和尚「おんし・・・何をしてとるね?」 ボク「鶏に縄をつけてる人だ。おつさま!夕方小屋に追い込むのが大変なんで・・・足に縄つけておこうかと思って・・・!」 和尚「ほんなことしてあかん!可愛そうやら・・・綱・・・とってやりやあ!仏様もなあ!生類あわれみ・・・と云うでなあ!生き物をいじめてはいかん・・・と云っておいでる。」 ボク「いじめてる訳じゃないよ!いじめられてるのはボクなんやよ。一匹小屋に入れば、一匹が出ていってしまいそいつを追い込むと、また別の一匹が逃げ出すんだ。大変なんです。」 和尚「案じることないに。夜寝る時には入るに」 ボク「うへっ!それ迄ボクここに居るの?」

11 軍鶏・蛙・蛇・百足虫
「おじさん。軍鶏は百足虫の毒・・・平気なんだろうか?」「毒の牙にやられる前に、刺ちやうから平気だろ」小さな蛙をやる。つん・・・とついばみ、ぱくっ!「いちころ・・・だあ!」「一発だんか!」「早え〜!」沢ガニ・・・をやる。ひとつつきで甲羅が割れ、足がバラバラになる。「すっげえ」「簡単〜!」「ガリガリ云わねえひと飲みだっ!」「かまねえや、腹の中大丈夫なのかあ?」「僕達も目刺しなんか、頭も骨も丸ご食わにやあかん!」「ひえーっ!」「やだあーっ」「ガヤガヤガヤ」

12 猫に追われ、鶏が皿干板の皿をこわした。
鶏「ケッケッケッケッ!コケーッ、コケーッ」鶏の悲鳴が突然聞こえる。 人々=室から飛び出した人達「アレーッ、シーッ、シーッ!」干板に並べられた胎土だけの皿が、数枚ふみつけられ、地面に残骸が散る。 人々「シーッ、あっちに行け!やだよ・・・野良猫だ!」猫は鶏を追い廻すのを諦め、図々しく人々をにらみ、やがてゆっくり姿を消した。 人々「図々しい猫だよ。皿板2〜3枚、駄目になった!」 April 28

13 軍鶏が、蛇を襲った。
善重「一寸と待ってる!面白いものを見せてやるぞい!魚籠を持ち来り、空中で逆さに振った、山かがしがでた。 子供「ひやーっ!」「やだ〜!」「逃げろーっ!」軍鶏が走り来て蛇の頭をくわえ、振り回し、たたきつけた。「すげ〜え!」蛇は、大口を開き、抵抗するが、軍鶏の爪に押さえられ動きがとれない。軍鶏が蛇の腹をつつき破り、内蔵を食い始めた。皆、毒気を抜かれ言葉が出ない。蛇は赤い舌をはき、断末間の様相を示し始めた。云う言葉がない。見た通り。

14 物の怪.A  よう怪.B  精霊.C(未稿)
切り口・・・自然現象〜幻影、不確実なものへの暗鬼。 人事的要因〜うわさが恐怖をあおる。身投げ、首つり、病死、描かれた恐ろしいもの。

15 台風
現況切口未定 栗のイガ爆弾、カワラを直撃する柿の実、ざわつきもみ合う竹薮、窯のトタン張りのバタツキ、雨戸のものすごいバタツキ、稲田の風波

16 あひる騒動 (資料未確認のため未稿)
B-Dデ基1共プロ課題、課題ファイル参照・要、鳥同士のいさかいと咲き乱れる花の対比。 切り口〜その争い・・・に対する素直なおどろきの表現で可。美しくもすさまじい・・・。

17 子守りをする子
兄「背負い篭ゆらすと居心地悪くて飛び出しちゃうぞ!」 弟「こいつ・・・赤ん坊みたいに眠っちうといいのにな!」 兄「そんな訳に行くかあ!恐がって篭にしがみついてるんじゃないか!振り向くな!お前が振り向から篭が揺れるんだぞ〜っ!」 弟「あっ畜生!オレの首筋・・・こいつのよだれでべとべとだあーっ!気持悪り〜っ!」 兄「歌でもやれよ。ねんねんよ〜、おころりよ〜っ・・・ってな!」

18 畑から・・・てんびんをかついで帰る。
弟「あっ畜生!又よだれ流しやがった!」 兄「よっちゃん!天びんかつぎ・・・ずい分上手になったなあ」 弟「兄っちゃん・・・おだてるなんてズルイゾ。これから先・・・どんどん重いもの・・・かつがせようとして・・・」「南瓜って重いんだぞ・・・」 兄「アハハハー、おだてるなってよかったなあ。ただ本当に良くなった。腰が入るようになった!」 弟「チェッ!未だ云ってらあ〜」

19 藤ずるによじ登り歓声を上げる水浴の子
A.「お〜い、こんな所でどうだ、もう登れないぞ〜!」 B.「未だだあ〜っ、オレ未だ川の中に立ってるぞ〜!」 皆.「まだたってよ!それぞれもう少し登れよ、ざわざわざわっ。どうだ・・・今度は?」 「もうあと30センチで終わりだ。そうしたら一勢に皆で落ちるぞ!」 木の葉がすれ合う音、藤づるが引き合い、こすれる音。気合いや、かけ声、川の流れる音、窯○の騒音

20 稲刈りに疲れ仮眠するボク
仲秋とは云え、日照りの田に出ての朝からの稲刈りは労働であり、夕暮迄に予定量を刈り取り、稲棚に掛けねばならぬ。昼飯を済ますと、急にねむけに襲われた。遠くで牛の啼く声、ごくちかくでは、ガサゴソ・・・といなごの飛び回る音、そんな中でついうとうとする。側で家族が「しばらく寝せこおけ、疲れがでたわっ!」と話す声が聞こえた。もうどうにもガマンが出来ない。グウーッ。

21 稲刈りの昼休み
嫁「さあたんと上がりやあせ!」「おにぎり何がいい?」「おかか、梅干し、しその実、味噌漬け、どれがいい?」 子供「ボク・・・のど乾いた。水がいい!」 嫁「そうやなあ、お婆ちやん、この子にお茶ひとつやって貰えんかのう?」 婆「よ〜し、ほれお茶やで、少しさめとるで・・・ごくんとをやりやあ!」 子供「へえ、ありがと」ゴクンとやって「ハアーッうまい!」

22 耕作する老夫・婦
爺「日暮が早うなったわ!」これじゃ幾らもできんわなあ・・・」 婆「秋は釣るべ落とし云うは、よく云うたものじゃ、そろそろ仕舞おうかえ!寒くなって来たし、夜露にぬれて風邪でも引いてはつまらんに。残りは又明日にでもよからうず?」 爺「そうするか。それじゃあこんなことで上がろうかのう」

23 稲ワラを背負うボク
刈り取った稲は、その場に設けられた稲架に掛けられ、乾燥させるが、その后・・・脱穀が大変だった。脱穀は自宅の納屋で行われ、その為に、田から稲束をはずし、納屋迄運ばねばならなかった。重い稲束が抜け落ちる。汗をかいた首筋に穂先が刺さり、痛く、かゆい。背負って運ぶ以外にない・・・つらい仕事だった。「あと何回運んだら終わるのか?」唯一の言葉だった。

24 春野に蝶を追う
冬は大抵2毛作で、麦の栽培耕作が行われたが、中にはれんげが植えられ休耕の田もあった。春らんまんの一日、れんげとたんぽぽの咲き乱れるこの畑と集い、年長、年少入り混って、じゃれ合うのが楽しみだった。蝶が群がり捕獲に興じたり、花飾りをつくったり。タンポポの水車を作り遺水に仕掛けたりして。春休みの一日を楽しんだ。

25 望遠鏡
続:24.春野に蝶を追う。 誰かが家の望遠鏡を持ち出し、通常のぞくことがない村の遠況に興じたのも、このれんげ畑だった。遠くの物をクローズ、アップして再確認することは遊び以外に、部落外の世界を基準に部落内を再確認する事につながり、又花鳥草木をファインダーの枠内に限定することは、物の存在のクラスターリングについて認識させるので、年長の子供は半日・・・これに興じていたが小さい子はすぐにあきてしまった。皆その日は満足し、帰宅して行った。

26 パチンコ
パチンコ遊びもその遊びのひとつ、獲物はと云ってもこれと云うものもないこの天国では、曲打に興じたり、的をねらい打ちする離技に打ち興じたりした。結局は反動の力を左右するゴムの質が結果を左右し、生ゴムのベルトをやっきとなって探すのだが、そんなにコロガっている訳はない。結局は、生ゴムのパチンコを持った子供から借りる事が多かった。二又の木の枠は皆2〜3個はもっていた。

27 お祭り騒ぎ(魚釣)
子供の頃は釣りと云うものを簡単に考えていた。薮で竹を切り出し、玩具の店先で、お仕着せのテグスと針を入手し、山咲の茎芯を抜き。浮きをつくり、后はみみずを掘り出し、川に流せば魚は釣れるものと思い込んでいた。后年・・・季節、時間、仕掛け、釣場等の多様な問題の交わった技を伴うものであることを知って驚いたが子供の頃がなつかしく、ちやちい仕掛けで大きな夢に胸をたかならしていた当時を、微笑まざるを得ない。竿の振り方も判らず、いつも柳の木に引っかけたり、仲間のシャツや耳たぼを引っかけていた。

28 魚釣りと水浴の子等(群)
太公望も期待し集まり見ていた外野の子供達も一向に釣れぬのにあきた。そうすると直ぐ水浴が始まった。こうなると、釣りどころではない。釣り場は腕白達で荒れ放題、大人達と子供達の大騒ぎの舞台となった。

29 犬と遊ぶ腕白等
犬・・・は子供達にっとて、孤独を癒す友だった。子供と云うものは、家の中に誰も居なかったり、遊びに集う場所に行っても仲間が一人も来て居ない折には、ふと孤独感に襲われるものだが、こうした時・・・犬を飼ってる友達の家にいって、飼い犬と勝手に遊ぶのだった。遊びに集う時、皆犬を連れてきたから、子供達は幼い子でもすぐに犬に慣れ、犬もよくなついた。一番幼い子が、年長の子の遊びに入れずに、犬の頭に手をおき、或は抱きながらこれを見ている光景は日常的だった。

30 柿の木の蛇を眺める子等
晩秋の頃になると。もう柿の実は、・・・食欲の対象では、なくなっていた。既に栗を落とした高い梢の枝先に、赤黒い迄に熟した姿でへばりついているのだが、その数は数える程で、時に崩れた中身突然頭上に落ちたり、又鳥やもづ等がつつき崩した柿の果肉がポトポト滴り、あたりを汚くしていた。鳥やモズはパチンコの好的となったが、投石は正確な子のみ許され、近所からの苦情はなっかた。

31 柿の実を襲うカラスを追うボク
祖父母の屋敷内中庭蔵前にもこうした柿の木があった。もっとも渋柿で、食欲の対象たり得なかった。併し・・・昔は柿酢や渋柿(合羽用)、干し柿等作ったそうだ。晩秋の始め、・・・そろそろ霜が降る頃、祖母に命じられよくこの柿の木の落葉を掃いたが、掃いた后、小石を手にして、残り柿をついばみに来る烏達を待っていた。命中こそなかったが、鳥の様子で投石の正確度が計れて、云わばと投石の練習台とした。

32 歩伏前進
これは、戦意高揚映画で観た軍隊教練の所謂[歩伏前進]の倣びで、或る夏休みの夜、野外校庭で催された映画会で子供達は皆このシーンをみていた。適当な原っぱを見つけては、皆で腹ばいになっていっざて行くのだった。リスクの高い遊びで着衣はやぶけない迄もボタンの一つ位は簡単になくなり、どろだらけになり、帰宅后のお祖母さんの苦言は良く判っていた。腹這いって草原を進む遊びはスリルがあって、リスクの少なそうな草地を見つけるとこれをやり、苦痛の陶酔を味わったものである。

33 井戸端に集う女の子
祖父母の家の正面入口(門先)には穀物の天日干しに使われる空地があって、その先には少しづつ高くなり、石壇二段程度昇ると井戸があった。井戸の右手に石の手打水鉢があり、私と一つ違いの妹は、よくこの当りに集い、ゴム飛びやお手玉遊びをしていた。手打水鉢に新鮮な水が汲みいられ菊の花びらが二三輪浮かべられているのを見て、さすがに女の子たちだな・・・と痛く感動したことがあった。

34 子守りをする男の子
起の室や窯には中肥田在の婦人達が製陶の仕事を求めて、働いていた。婦人達は、多くの場合家内に老人と幼児、乳飲子を置いていたが、年長の子は、幼児を背負い、下校后、夕刻迄の御用伺いを兼ねて、よく起の室の所に集まってきた。ほんの短い時間遊び思い出したかの様にあわてて帰宅する子もままあった。

35 未稿

36 潜水艦ゴッコ
潜水艦や飛行機の構造は、人気のあった少年クラブの挿し絵を参考に、学ぼうを前后反対にかぶる等は本物のグラビア写真等で見覚えた。残材の横に柿等置いてあつめたのがアイキヨウだった。窯場の隅には、炊きつけ用の建築廃材が、山積みされている事があった。腕白共はこれに目をつけ、さっそく遊びをつくり出した。潜水艦ごっこや飛行機ごっこがそれで、子供には大きすぎるこれらの材を使い飛行機の翼を模し、潜水艦の操舵室を模した。「面舵一杯!」「微速前進」「魚雷発射用意」「魚雷発射!」「豪沈!」等云って遊んだ。太い土管が2本用意され、短い丸太が魚雷で「発射!」の号令と共にこの土管から丸太が投げ出された。

37 犬とたわむれる・・・子

38 灌仏会(花祭り)
毎年、四月八日は灌仏会に当る。子供達にっとては、近所の天福寺縁合におかれた花で飾られた小堂の中の小さな釈迦象に甘茶を入れて貰う楽しみな日だった。暖温な春の好日、喜代先生がニコニコしながら誰々君の竹筒に入ったかな?・・・等と話しかけてくれる先生の表情は学校での顔つきと違った柔和で我れ先に竹筒を差し出したものだ。大きな鉢に入った甘茶は、小さなひしやくで汲みだされ上手に竹筒に汲み入れられ、礼を云って辞した后は、如何にこぼさぬよう、家に持ち帰ることだった。家ではお祖母さんが一口飲んで、その后どうなったか?記憶が定かでないが、仏壇にそなえられたことであろうと想像する。

39 野辺送りの老父
冬の寒さ厳しい或る日、老人の葬儀があった。着古したコートにくるまれポケットに手を込んだままのこの老人は墓地への山道への野辺送りにも参加せず、終始道の中に立ったままであったが、故人とどんな関係があったのか最後迄孤立したままであった。勢一杯働いて衰えたその姿には練えられたたくましさが未だ充分に残っていたが、友か知人か・・・その死に直面し急に心の弱さが露底し、言葉を失い、○立ちつくるかのように見えてならなかった。

40 野辺送りの婆さん
それに引きかえ老婆達は皆寄り合って、その病状の最後やら・・・故人の見知らぬ親族について、どこの誰それとうわさをしていてた。ふと仲間をはずれた老婆が人知れず涙を黒衣の袖でふいたのが心に残った。

41 冬のろばた(冬の室)
厳冬の2月は、窯の焼成は休みだった。室のろくろ作業も粘土凍結を恐れ休む室が多かった。だが・・・それを除きソ操業を続けた。当時きちんとした暖房設備などどこにもなく、皆・・・土間の炊火、湯沸かし、そしてそれがいささかのぬくもりを保った。そした室のお茶時にはにぎわった、四方にむしろを敷いて各自勝手な方向を向いて座し窯主が用意の漬け物等で何杯も熱いお茶をお代わりした。近所に子供が居れば呼び入れられ、お茶をいただいた。ひび、赤切れ、霜焼の小さな両手でお茶わんを持った時そのぬくもりに子供なりに一息入れた実感がわいた。

42 皿を干す人達
風のない晴れた日には少しでも天日乾燥を・・・との事でろくろ成型した皿は、室内で一昼夜自然乾燥の后・・・天日に干されるのが常だった。こんな日は屋外の干し場は超万杯となった。冬期は乾燥が早いが、急速乾燥は焼成前に早くも歪んで変形する不良品が多出した。こんな仕事は当然ながらベテランの判断に負うことが多い。皆その意見に従い機敏に働いた。こんな時腕白共は邪魔にならぬ様にするわきまえはあった。

43 急いで皿を仕舞う(雷雨、夕暮)
冬場は午後から急に風模様になったり、小雪が舞いそうになる事が多い。こんな時天日干しに出した皿は、皿板ごと一勢に室内棚に取り込まれた。巾8寸、長さ1間の板に並べられた皿はあっと云う間に屋外の干場から姿を消し、ぶつかったり、皿を落としたりする事は決してなかった。取り込んだ後に、天候が急速に回復し、日さしがもれ始めた節など、室内の皆が笑い出し「心配した事もなかったのう!」と気持ちをなごませた。彼等は手がなくて放り出してある家事等、想っていたことだろう。

44 ろくろ成型(婦人)
多くの婦人達は専業者でなく、家庭人で素人であった。併し顔付は真剣そのもの、話しかけるなど出来なかった。友達のお母さんも居て。遊びにたずねた際、洗たく物等取り入れている柔和な顔つきは、みじんになっかた。聞いた立ち話では、3寸の御手塩皿で1日24箇成型出来れば一人前とされたが、頭初の彼女等は700箇が限度・・・と云うことだった。700でも大変そうだ。

45 室のお茶時(豆腐屋さん)
室のお茶時間は午後の3時から30分間である。この時間帯には、外から室を訪れる人が意外に多い。お豆腐屋さんもこの休み時間を利用して売る。冬場は、これでも痛むことはなあいが、夏場は無理で夕方の引け時に来る。昼休みは1時間で大抵の人達は自宅に帰り昼食を家で済まし午後1時には室に午後の仕事につく。このお茶の時間に自宅に来る人はなく逆に乳飲児等子供を授乳につれて来ることが多い。

46 室のお茶会(授乳)
休み時間と云ってもゆっくり休む人は少ない、何かと家庭の草々を急いで済ましてしまう時間なのである。

47 室のろくろ成型(量産)
ベルト・ドライブ・クラッチ付き回転型成型、一分間2枚(3寸、御手塩皿)成型、干板1枚〜20枚、室内乾燥〜型から胎土が離れる間、天日乾燥〜完全乾燥、収縮室〜ろくろ成型直后比 2割

48 室のろくろ成型(動力)
原動力〜4馬力電動モーター 電力伝動〜ベルト・ドライブ 可動ろくろ数〜対向8基(最大) 回転停止〜足ふみクラッチ方式

49 室のろくろ成型(干柿を並べる職人)
責任者〜加藤 賢三氏長男(東一氏?) 次席〜同氏 夫人 職工〜豊さん(俗称、おとよさん) アルバイト〜3人(未定) 常時6人/統制生産下肥田街道より、ゆるやかに登る起部落入口下に自宅、一番近い馬引専業者

50 挨拶する馬方善重さ
岩手の馬市で求めた力強い雄馬黒毛一頭所有。豪放らいらく、働き者だが又酒豪、ざっくばらん。誰にでも気安く声をかける。超部落製陶業者(当時の統制下、合同組合下) 御用達の威あり。 石炭建築廃材(木片)の搬入 出荷〜起〜土岐津駅 他塩樽等。物資搬入 休関期〜田畑耕作等下作受け負う。

51 窯場に石炭を運び入れる善重さ
窯、室・・・のお茶時、「お茶一杯呼んでとうりょっ!」と大声で言って来る。一日中外回りの仕事で見聞広く、話が面白い。大声、あけっぴろげで陰がないから、皆から愛される。酒豪、冷酒コップ酒等、水の如く飲む。石炭搬入作業、荷馬車一杯を裸で猫車一台分スコップで積み、窯では又スコップですくって下ろす。力持ち。軍鶏、酒が趣味。

52 薪を割る男達
鋸切りを曵く 燃料不足の戦時下、松根は貴重な高カロリー燃料、根っこ一体のまま、窯に運ばれるから、これを通常の薪の大きさに切り分け、用に役立てる作業。困難。樹液(ヤニ)が強く、鋸切がねばり・・・常時石油を使用、洗い落とす。ズボンが松ヤニで黒光り。尚、切り分けた松根は、斧で縦割りにするがこれも重労働。部落外居住者だが数少ない肥田村の力持ち。

53 点火する男と・・・老人・婦人
エンゴロずめ、窯入れ、出入口封鎖、燃料の所定位置配給確認の后、従業者への焼成予定確認。交代時間と従業者の確認が行われ「それでは点火してください」との窯主の合図で既に炊き口に用意された古新聞に点火され、炊口内に放りこまれる。細木の炊き木、小割りの薪、松根等次々と投げ込まれれ、火勢が強いと見るや石炭が投げ込まれる。煙突の煙の引きを見ながら再度石炭を投入・・・6基の炊口の火勢がそろった所で点火終了。

54 窯場のお茶(持ち寄り)
窯の入口前で一服、徹夜焼成に備え夕食が供せられる。おにぎり、煮物、漬物、菓子、お茶、冬は里いも汁等供せら、皆しっかり食べる。夕食中も炊口点検があり、必要あれば石炭補給が行われる。

55 エンゴロづめ
“さや入れ”“さやづめ”とも呼ばれる。釉薬で高台が別の皿にとけてつかぬよう・・・白く上るはずの釉薬によごれや異物が附着せぬよう、素焼きのさやに焼成物一枚づつ入れ保護する。窯づみ時、重量は千倍位になる。

56 窯づめ
三寸御手塩皿の場合、これをエンゴロに入れ、計50以上を筒状にスタッキング、窯の奥に縦づみし、入口迄くると、出入口を耐火レンガで封鎖。窯つめは終了する。後は、焼成点火されるのみ。通常このまま3〜4日放置されているが、何の為か不明。恐らくは、可動スタッフの日程調整かと思われる。

57 窯の入口封鎖
窯ずめ完了後、直ちに窯の入口封鎖作業が続く。耐火煉瓦、下から積まれ、粘土で目地ズメ、又耐火煉瓦を積み重ねして、下から上へと封鎖する。専一春の長兄(戦地で負傷、帰国、退役)が常にこれに従事。かくて・・・焼成前準備は整った。後は、出入口右の小窓に、焼成度進行を計る被検体(高さ30mm程度、粘土製、三角錐状一定温度になると先端が曲り、垂れ下がる)を5箇設置するのみ。

58 火入れの儀式
茶碗酒(御祝酒)が配られ、窯主の挨拶の後、点火担当者が各炊き口に待期、窯主の・・・点火・・・の合図に従うのみ。長い焼成作業を前に緊張と、ここまでこぎつけた安堵が綯い交わった不思議な一時が流れる。

59 窯炊きで仮眠する男
窯炊きは、24時間3交替で行われる。戦時下とて、人手がなく、一人8時間の従事。従事者達は、食える時に食い、寝れる時に限り、窯の事務所や、窯の出入口前に敷かれたむしろの上、柱の陰・・・他思い思いに従い、何所でも寝った。時間が近づくと、自分で起きる人も、起こされる迄寝ている人も居た。交替は焼成の進行具合につき・・・申し送り・・・が済んで終了した。真夜中であっても担当から外れた人は、一時自宅に帰って行った。

60 窯の検温
上記の検温だが・・・被検体の三角錐は、粘土の高熱によって・・・へたり・・・が来るよう、質の違う粘土で出来ており・・・何番の粘土がへたり始めたから今何度迄焼成温度上昇・・・と判断する。1,200°を越えそうになると慎重になされた。これを越えぬと、焼成は失敗、上がりは病的になった。悪質燃料が原因の大半だ。

61 火止めの一杯
焼成温度が1210°を越えると従事者の顔に安堵の表情が浮かぶ。彩薬は完全に透明になり、絵付きの発色を彩にするし、胎士は焼き締まり、窯冷やし〜カマサマシ・・・の際の器形の変化、ひづみ・・・が起こらない。窯主の「炊き方止め」の合図で炊き方は終わり、炊口は粘土で密封される。急速な温度低下防止策である。怠ると貫入変形がすさまじい。

62 窯の冷める・・・を待つ、お年玉へぬくもり
焼成終了後、概ね72時間後・・・窯の小窓(被検体設置部分の閉鎖煉ガ取り除かれ、出入口庫が最上部の目地粘土をたたき除却する。極めて少しずつ窯内に外気を取り込み、廃熱を行う。窯の中では急速に温度低下の為、エンゴロの収縮による窯鳴きが始まる。チンチンピーンピチピチ、ピーン!!!それはとてもやかましく、又耳支りであった。周辺の地面もぬくもりを持ち、心地よかった。(冬至)

63 閑散とした窯
大そうな労力を要することもなく、廃熱処理を終えて・・・人々は、火災防止の為、炊き口附近の薪をかたずけ・・・残った石炭をスコップでまとめ、寄せ、古新聞など散乱する可能性のゴミを片づけた。そして窯主の所に集まり、打ち上げの酒をふるまわれ、ねぎらいの言葉を受け、そして各自の家に散って行った。最後の焼成当直は、窯主を含めた4〜5人で、大仕事の割には、ひっそりとした・・・又・・・あっけないものだった。

64 入口の煉ガ除却(窯開き)
炊き止めから概ね・・・100時間後〜4日目・・・に第2段階目の廃熱処理が施される。窯主が立ち合い、専一君の長兄が窯の出入口を封鎖していた耐火煉ガの上半分を崩し、除去するのである。急速に熱気が吹き出したが、耐えられぬことはない。壁の最上部は常時開口となっており、室内に熱がこもることはないが、地面は暖かく、冬季は近所の猫が集まり昼寝をしていた。相変わらず窯鳴きが激しく開口部から砂粒状の陶片が弾きだされていた。

65 真剣な眼ざし(焼成点検)
先に記したが、焼成の進行度は・・・被検体の・・・所謂へたり・・・を見て判断するのだが、その眼ざしが○○であることは当然。過去経験した窯の場合を想起し、慎重なものだった。併し・・・最終判断は甚だ平凡で「まあ・・・よからあず!」のひとことだった。実に柔和な表情で静かに語ると「私もそう思いますけど・・・」と返事。これで一切決定。決断の一幕は降りた。

66 搬出と・・・エンゴロはずし
概ね・・・炊き止めから一週間後、窯の入口をふさいでいた残りの耐火煉ガのすべてを除去、大量の外気を窯内に取り入れる。窯鳴きは一層高まる。このまま2−3日放置後、いよいよ、焼成品の取り出しに入る。窯主と現場責任者の緊張の時がやってくる。

67 皿の山、山・・・エンゴロはづしの後
焼成終了10日・・・いよいよ窯出し・・・の日だ。室のろくろ担当の人も、ろくろ作業は中断休業で、こちらに待期・・・「では、の合図で各むしろに散って待機、背丈のある男衆が窯からエンゴロの筒を運び出す。窯主と現場責任者は窯内、部位による焼成の違いはないか?あちこちのむしろを廻って点検するのに忙しい。エンゴロからはずされた皿がたちまち山を為す。

68 不良品、ゆがみ、ひび、印版ミスetc
窯出し、エンゴロからはずしの間中、焼成険品が続く。仕入粘土の質、土練の完成度、粗製成型、乾燥によるひずみ、絵付け不良(顔料、濃度)技術的完成度、発色、釉薬の溶解度、窯内部位による変形等、窯の部位別に終始チェックされる。エンゴロはづし担当者は、製品を常にチェック、不良品があればサンプルとして保管し、窯主と責任者に提供する。

69 作業場に侵入した鶏を追う
エンゴロはずしも後半に入った或る日の珍事、窯主賢三さんの家のチャボが作業中の窯に珍入。エンゴロの取り出しをする現場責任者の足元にまとわりつき、チャボ責任者、相方大いにあわてさせた。何が気に入ったか?・・・その後も窯に入ったり出たり・・・その度に、チャボは悲鳴を上げ、ケッケッケッケッコー!窯主・・・これに耐え、母家縁側で豆を干していた奥さんに叫んで曰く・・・「婆さんや・・・窯にチャボが入って邪魔つけでかなわんわ!鶏小屋から出さんで呉んかえ・・・?」婆さん曰く「そのチャボは、あんたが好きなんかも知れんぞえ〜?」。窯主ぼやき「何を云うとる?・・・アホクソテカナワンね!」に従業員一同・・・大笑い。

70 焼き上げた皿の各種文様(平面図)

71 出荷に来た・・・善重さと馬車
お早うございました!今日は又御苦労のことで・・・お願いします。へえ・・・そんで・・・どこの何を積んだらええかな?へえ!ここに積んである全部や!土岐津駅の貨物扱いやが、昨日駅へ行っあう、よう話したるで・・・

72 搬出を手伝うボク(出荷、善重さ)
何や・・・坊は又手伝って笑われるか!ほな又土岐津の駅の機関車、見に連れっててやろうか?。荷積み終わったら、お祖母ちゃんに行っていいか話しておいで」「うん」奥さんこの坊は汽艦車が好きでのう!窯主の奥さん「ほなやの!そりやあ都合がええわ。この馬車、駅に行くで・・・」「坊!ついでに善重さが途中コップ酒やらん様にちをつけて貰わんと。判ったかな?うん!」善重さ・・・そんな殺生な!

73 馬車に乗せて貰う・・・ボク
坊・・・!おじいちゃん、おばあちゃん元気かえ・・・?うん・・・元気だよ!おじいちゃんはオレの小学校の時校長先生をつとめとらしたが・・・オレ達・・・ようしかられよった。米屋の市三さなあ・・・あれも同級生や!

74 街道を行く善重さ
街道でゴキゲン(善重さ)ええ塩配やのう・・・!ほーや!・・・この所よく続いて・・・!今年の夏は暑いかもしれへんねん!ほーや!・・・暑いのはこたえるのう!ほいじあ・・・ごめんなすって・・・!パカ・パカ・パカ・・・。

75 馬に水をボク、飲ませる(土岐津駅)
おじさん・・・ボク水汲んで来るよ。馬に飲ませるんでは? 善重さ・・・バケツを出してくれて・・・ほいじあ・・・頼まあ・・・!貨物ホームの水道は余り使わんで

76 馬車を止めて、上から立ち話する善重さ
最初少し水を出しっぱなしにて。水が冷たくなったらこれに汲んでくりよ!!!馬も喜ぶに・・・。 ボク・・・うん良く判った。最初貨物ホームに水まきしてやるよ。そうしたら冷たい水が出て来るでしょ! 善重さ・・・そりやあええわ・・・!

77 お婆ちゃんも乗せて貰った。
善・・・お婆ちゃん・・・ええ塩配やのう。今日はどこえお出でるえ〜? 婆・・・土岐の病院や・・・薬を貰いにのう。 善・・・乗って行きやあせ・・・! 婆・・・へえ大きに、けどワシその高い所よう登らん! 善・・・ええわ・・・ワシが抱っこして上げるで・・・ 婆・・・よう云わん。恥しゅうてそんなことええわ! 善・・・なあ〜に。人が見ててもええわ、さあここえ来なはれ・・・!

78 貨物ホーム、積荷おろし、列車待ちの老婆、無蓋車を見る柵上の僕
貨物ホーム積荷降ろし、婆さんとの話、汽関車をみるボクお婆ちゃん、ボク今日、善重さの見守り役なんだ。賢江のお婆ちゃんから頼まれた。コップ酒飲ましちあいけない・・・って。ほうか、そりやあ御苦労やのう一寸っとでも目を離しちあいかんに。一寸とでも姿見えなんだら、注意せにやあ。

79 善重さのカタをたたく(帰途馬車上)
善重さ・・・坊!少し疲れたなあ・・・?皿の束は重たいで結構疲れるでのう! ボク・・・ああおじさん駄目駄目、コップ酒は駄目って。賢三さのお婆ちゃんが云ったじあないか!その替わり・・・ボク・・・カタたたいて上げる!善重さ・・・そりやあ助かる。ここんとこ頼むよ!

80 善重さの馬と僕
おじさん、この馬青っぽくないのに・・・、どうして”青”って呼ぶの?馬はなあ・・・・大体が濃い茶色しているだろ・・・中ど赤みの少ない黒っぽいのを青って特別に云うだ。こいつ特別だぞ!ふ〜ん、なんだか変だね!オイツ青くない青ッ!!!

81 鍬打ちする、腰の曲がったお婆さん。
「精が出やすのう」畔を鍬をかつぎ行く婦人が声をかける「へえ・・・草が伸びて伸びて・・・」色々な複雑な想いがあるだろう。が・・・淡々と畑を耕す老婆の顔に、その屈託はない。畑はいつも鍬が入って居リ、作物は順調で老婆の手が充分入っている事を感じさせる。日々の管理が生きる楽しみでその楽しみに見を託しているようであった。

82 耕した所に鳥が群がる(地虫の補虫)
「婆さんや・・・耕した所に鳥が群がっているが・・・そんなに虫けらが居るもんがいのう?」「どうやしらん...でも居るとみえるのう。何か嘴でつついいるのう、夢中にあっさて居るわのう?」「もうすぐ花の季節や・・・さてすぐに色々播かにやならんで・・・何とか昼迄にすきたいものだのう!」「今年は馬鈴暮の種はどうしや〜すえ?」「そうやな・・・納屋の藁をみてみんと何とも云えぬが買わんでもええように思うがどうや?」「ちょっと芽が出掛かって居る奴があるようじゃよ・・・!」

83 鍬をつえにして立ちすくむお婆さん。
馬鹿にカラスが近くで鳴きさわぎ、当り一帯は余り気持ちがよくないらしい。近くの誰か死んだ・・・らしい・・・と思う。部落のお年寄りの間の迷信である。いつ・・・死が訪れてもおかしくない・・・と云う認識があり・・・迷信であれ何であれ・・・死を余感させるものには・・・いつも敏感に反能するのであった。

84 穀物を干す・・・老婦人達
「○○ちゃん、その足元に、むしろからこぼれた豆がある。拾って、むしろの中に放り込んでくりよ!」「お婆ちゃん・・・ずい分こぼした。しょうがないねえ!」「ほんにのう・・・豆が元気で飛んで行った・・・」「全部拾ったよ」「ありがと、○○ちゃんは眼がいいできれいに拾えたわ、豆干すにはええお日寄りだ」

85 箕に豆を入れて運ぶお婆さん
「おじいさん・・・小豆の種子は2升もあればええかのう・・・?」「ええやら〜ず・・・余り沢山作っても食う人が居らへんに・・・!」「砂糖の配給がのうなって、汁粉がつくれん様になって小豆は全然へらん様になってしもうて・・・じゃ2升としておくでのう」

86 頭上に箱を乗せ運ぶ男
「ようやく部品が手に入ったわ。1ヶ月もかかったで」「ほんでもよ〜、新品が入手できたやらあ?」おらあ所では、中古品しか手に入らなんだぞな!」

87 タイヤを運ぶ車屋の男(修理)
これ再生タイヤやよ。古タイヤの表面にゴムゾウリの裏と似た奴が焼きつけてある。すぐに駄目になるぞなあ。最近は、粗悪なものばかりだあ・・・!」

88 収穫物を両手で運ぶ婦人
「トマトをとって来た・・・!こいつは一切れ食べてみて甘味があれば来年の種にしたらええと思うが・・・」「ほうやのう。いかいトマトやのう。今一切れ、切り分けて見るに、一口食べてみあ〜」「ほな一口食べてみるかいのう」「はい、はい」

89 曲がった腰を伸ばし
孫の話相手となる老婆 ○○チャン?お姉ちゃんやお兄ちゃんは未だ帰って来やへんか?うん・・・今日は学校で○○会の準備で、帰りが遅くなるって・・・!ほうか・・・○○ちゃんは、今日は一人か!よしよし今日は婆ちゃんの側にくっついとれ!。ほれじゃ、一寸と早いがお茶にしようかのう。こっちおいで!」

90 頭に桶を乗せる男
「駄知の欽一さのう・・・同級生の・・・!」「なに楓欽一のことか今駄知に居るやの?」「ほうや〜それがのう〜駄知温泉のすぐ近くの土地を仮りやあして・・・養魚場を始めやあしてのう。今朝様子をみに行ったら、売り物にならぬ小さな鯉をくれてなんし・・・田圃に放てえと云うもんで、これから田に放ちに行く所や」「白さざに食われんようにせんとのう」「欽一さの云う様に本当に田の草が少くなるもんかいのう。」

91 大きな鯉が、釣れたぞーう!
善「坊達・・・これ見い・・・えらいいかい奴ちや!!如何に何でもこの川にはこんないかいのは居りやへんに。こいつはこの間の台風で、どこかの池か養魚場から」流れ出した奴ちや!」 子供「すげ〜や、これ食ったらうめ〜ぞきっと・・・」 善「いいんね・・・こんなでけえ奴はうまくなんかねえ。20cm〜30cm位の奴が一番うめえぞ」 子供「ほんじあどうするの・・・持ち帰って?」 善「亀さんの池で飼ってくれんだろ!ともかく持ち込んで見ようわい。」 子供「亀さの所にはいかいの、うようよいる・・・!」「でもおじさんはすげえや。何と云っても釣ったんだからな!!!」

92 未稿

93 靴を縫うがっしりした男
彼は元商船のボイラーマンで、その技能が買われ賢三氏の窯専門で、働く事になった。高齢ではあったが、窯炊きの技術は鮮やかで力持ち、石炭投入等は、並の人の2倍位早いし、一回のスッコプですくう量は抜群に大量だった。平素は無口で、商船に乗っていた時間が長く、何でも自分で処理した。縫いもの、靴の修理など朝飯前だった。

94 牛を追って・・・代かきする小柄な男
小さくて目立たず、大勢集まっている時もひっそりして、皆が大笑いする時も、声を出さず顔をゆるめるだけであった。牛をもっていて、田圃の代かき時には日やとい(起ではひようとり・・・と云った)で頼まれ、多くの家で重宝がられていた。体が云う事をよく聞き分け、抵抗すると云う事がなかった。小さな声で、はいつつ!とかよしよし・・・と云うだけで、皆はいつも感心させられた。残念ながら名前を失念してしまった。忘れ得ぬ人々の一人である。

95 シャベルの男(窯の炊口)
彼は、賢三窯になくてはならぬ若い人材だが・・・実は傷病兵で帰国除隊である。足首を砲弾の断片でやられ、足首の動きが不自由である。こぼしたり、ぐちったりすることの決してない彼は、自らそっせんし働く。窯の人々からの信頼が厚い。片足首不具合ながら、窯炊きの動作は力感に充ち若々しいたのもしさを感じさせてくれる。

96 ハンチングの老夫
No.39野辺送りの老夫と同種の動機

97 山上開コン(総動員)
村の財産区にある山上は、村から格安の値で、貸しつける畑だった。政府はから・・・食料増座の為の開墾推奨・・・をやかましく呼びかけられ、困った末に開墾を名義に、財産区内に埋まっている松の根を掘り出し、窯元対象に競売に掛ける怪策を立てた。売り上げは目当として後日分配された。

98 花を栽培する老婆
財産区の一画を既に借り受け花を栽培するお婆さんが居た。お彼岸、おぼん、祭り等、村の商店に卸して売っていた。これが馬鹿にならず売り上げはうなぎ登りだったとか。実のところ余りにあわただしく、切りつめの生活の中で、婦人部有志が協力を申し出て、山上に水を汲み上げる等手伝い、又婦人部を通じて、花は売れもした。美し花の咲き乱れた斜面上空にB-29の大編隊が雄然と飛行する光景を異様に眺めた。

99 祭りの食物を皆でつくる
元々は・・・夏祭りと秋祭り・・・があった。戦時下で秋祭りの一つにしぼられた。窯元では、従業員達の日頃の苦労に報謝する趣旨で、皆で御馳走をつくり、各自にわけて持ち帰らせた。朝から門先にむしろを敷き、また皿干場は臨時の煮物場となり。煉炭が炊かれていた。野菜は持ち寄り、鶏肉は窯元でつぶし提供した。婦人達の口はとじられることなく終日語り続けた。

100 小柄なお婆ちゃんの雪の日の・・・お出かけ。
皿干場にこんなにざる・篭・厨器が択山干されたことはない・・・にぎやかな祭りの前日だった。このお婆ちゃん・・地元の出ではなく、越後から嫁入った・・・と云うことだった。冬の防寒着や雪の日のいで立ちは、本格的な越後のもので、皆感心して見せてもらった、今日は今日とて、めずらしい降雪の一日で、それでも越後のスタイルでバスに乗り込み病院に薬を貰いに出掛け、皆挨拶を送った。肥田村の名物お婆ちゃんであった。


 
作品資料

各作品シリーズの図版を1枚づつ閲覧することができます。順次収録図版を追加していきます。お楽しみください。

各作品シリーズの図版を映像編集してあり、スライドショーとしてご覧いただけます。順次収録映像を追加していきます。お楽しみください。








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